2016年06月17日

ヌチ薬

 久しぶりに伊江島から電話があった。電話の主は昔お世話になったタバコ農家の人。話したのは1年ぶりぐらい。連絡しなければとは思っていたけど、電話で声を聞くと伊江島が恋しくなって、今の生活がもっと嫌になって、仕事をやめて伊江島に行きたくなるから電話をしていなかった。毎年ハーリー(旧暦の5月4日)に合わせて行っていたけど、ここ2年は行けていない。行きたいけど、行ったら今の生活を全て投げ出しちゃいそうで・・・。

 今年はもうタバコの収穫が終わったらしい。天候不順でまだ熟していないけどダメになる前にということで全て収穫せざるをえなかったとのこと。東京にいても常に伊江島のこと、タバコ農家のことは考えていて、そろそろ総がき(全ての葉を収穫すること)かなぁと思っていただけにちょっとビックリだった。葉タバコが熟すには梅雨の十分な雨量と梅雨明け後の日照の両方が必要で、どちらかが欠けても十分に熟さない。それが今年は空梅雨で全然雨が降らなかったそう。

 葉タバコは熟し具合(=ニコチンの含み具合)でJTによってランク分けされて買取価格が決まるので、熟す前に収穫したのなら今年のタバコ農家の収入は悲惨なことになるだろう。一年の収入が収穫の時期の天候で決まってしまうタバコ農家の悲哀を知っているだけに、何と言って慰めたらいいのかわからなかった。本人は「仕事なくなったからテツのとこにいってバイトしようかな」とか冗談ぽく言っていたけど・・・。

 思わぬ電話をもらって伊江島のことを思い出したら無性に美味い島酒が飲みたくなったが、近所のコンビニにはこれしかなかった。

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 私の大好きな松藤には及ばないけど、島酒としての味はまぁ悪くはない。ネットで調べると沖縄県酒造協同組合が「県下46酒造所が生産する泡盛のなかから良質な泡盛を長期貯蔵し、古酒として安定的に供給するために作られた銘柄」ということなので、味が良いのは納得がいった。内地のコンビニで売るには島酒らしさがありつつも上品な味のする酒なので良い選択だと思う。確か太宰治だったと思うが、「泡盛は臭すぎて飲めなかった」といった感じの記述があった気がするから、やはり内地の人にアピールするにはこういう「飲みやすい」島酒の方がいいと思う。でも、私は太宰が「臭い」と言った昔ながらの風味を残した島酒、そう松藤のような酒が好きなんだけどね。

 ただ、解せないのがこの名前。「なんぷう」ってなんじゃい。那覇の方言だと「ふぇーかじ」、本島北部方言だと「ぱいかじ」だろう。ちなみに、那覇の方言ではハ行がファ行、本島北部方言ではさらにそれがパ行になる。これは奈良・平安時代頃の古い日本語の名残で、奄美地方にもその痕跡があり、このことでも柳田国男の方言周圏論は証明できるわけだが、話が脱線しまくりなのでこの話はまた機会があれば後ほど。

 閑話休題。とりあえずこの南風という島酒。味は認めてもこの名前だけは認めることができない。これはナイチャーに媚を売った名前でしょう。ウチナンチューが南風のことを「なんぷう」って言ってるの聞いたことないですよ。

 ちなみに、沖縄方言で東西南北は東が「あがり」で、南が「はえ」もしくは「ふぇー」、西が「いり」で、北が「にし」。とりあえず、東と西は太陽の「上がる」方角と「入る」方角から来ているってのは分かりやすいでしょう。西表島の「いり」もそうですね。一方の南と北は一見すると意味不明ですが、沖縄方言では南風のことを「ふぇーかじ」、北風のことを「にしかじ」と呼ぶと言えば合点がいくと思います。風を表す言葉がそのまま方位を表す言葉となったようです。西が「いり」で北が「にし」なのはナイチャーにはかなりややこしいですが。

 余談ですが、那覇の北に「西原」という地名があります。本島南部の東海岸に近い場所にあるのに何故か「西原」。不思議な地名ですが、これも琉球王朝の首都の首里から見て北(にし)にあるからということで説明がつきます。「にしはる」(北の畑)という沖縄方言の地名に「西原」という大和言葉の漢字を当てはめたわけですね。

 さらに余談ですが、「城」のことを沖縄方言では「ぐすく」と読みます。沖縄には大城、金城、玉城といった苗字が多いが、これは本来それぞれ「おおぐすく」、「かなぐすく」、「たまぐすく」という読み方が正しかったのが、琉球処分以降に内地風の名前に変えられ、「おおしろ」、「かなしろ」、「たましろ」と呼ぶようになったわけです。

 さらにさらに余談ですが、それぞれの風向きの風に呼び名があるというのは地中海世界でもありまして、イタリアでは地中海を越えてくる熱い東南の風のことを「シロッコ」と呼びます。15年ほど前に行ったチュニジアのドゥッガというところにある古代ローマ時代の遺跡の床石に各方角の風の名前が刻まれていて、その中に「シロッコ」というラテン語を見た時はちょっと感動しましたね。これがあのZガンダムのパプテマス・シロッコの名前の由来なんだと思うと。

 以上、ヌチ薬(命の薬=酒)を飲みながら、いい感じに酔っ払って適当な話を書いてみました。といっても、全部本当の話なんで、興味のある方はぜひ一度私と一緒に酒を飲みながら、古代日本語と琉球・奄美方言の関係とか、柳田国男の方言周圏論と探偵ナイトスクープとの関係とかについて語り会いましょう♪最近一緒に酒を飲んでくる人がいなくて、いつも一人で酒を飲んでいます。寂しいっす・・・。
posted by Tets at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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